サンプルの性質・培養条件の影響を
受けることなく、微生物汚染の有無を
迅速に計測する事を実現
物産フードサイエンス株式会社
物産フードサイエンスは、1969年の創業以降、糖アルコール製品を中心とする機能性食品素材・医薬品素材・化学品素材を製造している糖アルコール国内トップメーカーだ。
同社では、当初より食品の品質への取り組みに注力しており、品質方針(ISO9001認証 2005年7月取得)、環境方針(ISO14001認証 2007年1月取得)、食品安全方針(FSSC22000認証 2013年12月取得)を、全て取得している。ただし、製品の安全性への取り組みにおいては、以前より課題が存在していた。
ELESTA®PixeeMo®が問題を解決
②リードタイムの短い製品でも、微生物汚染の有無を測定する事が可能に。
課題と解決策
課題
- 製品や荷姿の都合上、最終製品の出荷前に迅速に微生物汚染リスクを把握する対策が必要。
- カビ、酵母、細菌を正確に測定可能な迅速測定法を探していた。
解決策
- 今までにない微粒子分離技術AMATAR®を搭載した微生物モニタリングシステムを導入。
- 微生物の汚染リスクを確認した後に出荷できる体制の構築。
会社・製品の特長
物産フードサイエンスは、1969年に糖アルコール類製品の製造を目的に設立された、三井物産グループのフードサイエンス領域の中核会社である。糖アルコールで国内トップシェアを持ち、主力製品であるソルビトールをはじめ、還元水飴、エリスリトール、キシリトール、マルチトール、共晶体技術を用いた世界初の粉末高糖化還元水飴「スイートP EM」など、市場のニーズを捉えた様々な糖アルコールの製品化を進めてきた。また、食品から医薬品、工業用途まで幅広い新規用途の開拓を行い、顧客の課題を解決してきた企業である。 その他にも物産フードサイエンスでは糖アルコール事業で培った技術力・研究開発力を活かし、腸内の有用菌(ビフィズス菌、乳酸菌、酪酸産生菌等)を増やす働きがある高機能プレバイオティクス「ケストース」の研究を推進しており、2017年に日本プロバイオティクス学会賞受賞を、2018年には 『ケストースによる生活習慣病予防・改善効果』に関する研究で、公益財団法人 飯島藤十郎記念食品科学振興財団より飯島藤十郎食品技術賞を受賞する等、機能性素材分野でも注目されている。
課題の発生状況
物産フードサイエンスの製品納品先は、大手食品・飲料メーカー、化粧品会社や医薬品メーカーと多岐に渡り、特に医薬品および飲料メーカーが原料を受け入れる際の微生物基準値は非常に厳しい。物産フードサイエンスでは、万全の品質検査体制にて、求められる微生物基準値内の微生物数を確認、品質保証をして製品を出荷してきた。そして更なる安全対策の為、最終出荷製品の微生物試験も実施しているが、培養試験特有の課題があった。 現在非培養の迅速法の一つとして蛍光染色法があげられるが、糖アルコールを蛍光染色法で検査した場合、液糖の影響や微生物の種差による染色不良により、本来存在する微生物数を正確に計測することができなかった。また独自の迅速測定試験を策定し運用を開始したが、多くの課題が存在していた。
導入の決め手
「最終製品サンプルの微生物汚染リスクを迅速に把握した上で出荷する体制を構築したい」物産フードサイエンスの要望に対し、AFIテクノロジーでは、飲料水のマトリックスにおいてAOAC-PTM認証を取得したELESTA® PixeeMo®を用いた試験プロトコルの提案を行った。その内容は、「糖アルコールのサンプルからカビ、酵母、細菌の分離は可能」「ELESTA® PixeeMo®で検出できる微生物数と培養法で検出できる微生物数は、相関性がある」「10¹cells/ml濃度の低濃度の微生物まで確認できる」という内容だった。
「当社は、お客様の用途に応じて様々な糖組成や粘度の還元水飴を取り扱っており、本機を導入検討する際、粘度など物性の違いが測定結果にどのような影響を与えるか見極める必要がありました。そこで、製品の粘性が検査結果に与える影響を検証する為、当社製品のうち、最も粘性の高い『エスイー100 (4500 mPa・s, 25ºC)』と、最も粘性の低い『ソルビトール液 (120 mPa・s, 25ºC)』を渡し、測定結果にばらつきが出ない分析手法の作成をAFIテクノロジーへ依頼しました。その結果、単一のメソッドで様々な製品の分析が可能になる簡便な手法を確立、提案していただいたことが本機導入の決め手となりました。早急に最終製品サンプルの微生物迅速汚染リスク分析手法として使用可能か検証を行いたく、正式な導入手続きを開始しました。」
導入の効果
「年間1500万本の出荷体制であれば、1日あたりに生産される製品の検査にかかるコストは膨大です。製品検査を国際標準法と同等の信頼性と精度を保持したまま、即日出荷判定できることは、工場の運営に大きな前進をもたらしました。ELESTA® PixeeMo®を導入することによって、迅速に出荷できる体制を構築する事ができました。」 「ELESTA® PixeeMo®を導入後、検査時の培養条件に影響を受けることなく、製品の微生物汚染リスクを把握できるようになったのはとても重要な事です。製品の安全性も格段に高められたと考えています」
培養法では結果判定までに2日から4日要するのに対し、ELESTA® PixeeMo®を用いた微生物汚染リスク分析の検査時間は前処理含め約1時間半と、大幅に短縮された。現在、生産本部品質管理課へ導入、当初の主旨であった“最終製品サンプルの微生物汚染リスクを把握した上で出荷する体制”の構築に注力している。
「明日の素材をつくり、明日の生活をつくり、明日の笑顔をつくる。」
創業から50年の間、物産フードサイエンスでは、糖に様々な価値を与える為の挑戦を繰り返してきた。製品の安全性においても、顧客や消費者の安心・安全ために、より先進的な検査体制へ投資を惜しむ事はない。そのような物産フードサイエンスの姿勢が、これからも人々の健康的な暮らし支えていく。
「当社は、製品タンクより採取したサンプルの培養試験の結果をもって、品質保証書の微生物が規格内である事を保証しております。そして最終製品の微生物試験も実施し、規格外の製品をお客様に出荷しないよう細心の注意を払って出荷しております。しかしながら、タンクローリーやコンテナといった荷姿の場合、充填から出荷までのリードタイムが短い為、通常の培養試験では結果が判明するのが製品出荷後となってしまい、当社が目指している、すべての最終製品の品質保証という観点から課題であると考えていました。そのため我々研究本部生産技術部で、培養法と並行して実施する検査法の検討を始めました。」 「蛍光染色法を検討した結果、カビの胞子などを正確に計測することができず、出荷前検査へ導入することは難しいと判断しました。また私達が微生物研究に用いているPCR法の技術を応用した、微生物の迅速測定法を独自に策定、運用を開始しました。しかしPCR迅速測定法は微生物の存在の有無は確認できますが、概算でしか菌数を確認できず、また試験者に高度な手技が必要なため、試験者が限られてしまうという問題がありました。微生物汚染リスクを簡便かつ迅速に検出する事が出来る方法を導入したく、様々な検討をしたものの、当社が求める結果が得られませんでしたが、ある展示会でELESTA® PixeeMo®のデモを見る機会があり、その先進的な技術に非常に興味をもちました。」